研究概要 |
重症頭部外傷急性期の頭蓋内循環動態と脳損傷のタイプとの関連及び各種治療法(外科的手術やバルビタール療法)の効果について検討した。対象症例は入院時Glasgow Coma Scale(GCS)score8以下の重症頭部外傷15例(17歳〜88歳:平均48歳)で、全例カミノシステムにより頭蓋内圧を持続測定した。また、右内頚静脈球部にfiberoptic catheterを留置し、内頚静脈酸素飽和度(SjO_2)を持続測定し温度センサーにより脳表温を持続測定した。脳循環の指標として経頭蓋超音波ドップラー(TCD)を用いて中大脳動脈血流速度(MCA-FV)測定を行った。その他近赤外線スペクトロスコピーによる脳組織酸素飽和度も同時測定した。これらをdiffuse brain injuryとfocal brain injuryとで比較するとともに外科的減圧術やバルビタール療法前後の推移について検討した。脳灌流圧(CPP)とSjO_2の経時点変化はdiffuse,focal brain injuryともに生存例は死亡例に比して高い値で推移し、またGCS5以下の最重症例ではその他の症例に比べSjO_2は抵値であった。focal brain injuryではCPPの低下に伴いMCA-FVは進行性に低下したのに比べ、diffuse brain injuryでは一定の関連はなかった。両群ともSjO_2,組織酵素飽和度,CPPは50%、50mmHg以下の症例に有意に死亡例が多かった。以上の結果より重症頭部外傷急性期の頭蓋内循環代謝動態は脳損傷のタイプにより異なるが、CPP,SjO_2のcritical levelはおよそ50%,50mmHgであり、外科的治療やバルビタール療法などでそれ以上の値に維持しなければならないと考えられた。これらの結果の一部は、第12回日本脳・神経超音波研究会(1993東京),第3回脳静脈酵素飽和度(SjO_2)研究会(1993東京),並びにIASTBI(1993東京)において発表した。
|