研究概要 |
卵巣癌患者自身の免疫系が認識している癌産生分子に対するモノクローナル抗体を作り,早期診断法の開発と、更に解析を進め将来的には癌特異免疫療法を目的とした。卵巣癌患者より大量に得られた腹水(30例)よりImmunc Complcs(IC)を精製し,(硫酸アンモニウムによる沈澱,Scphacryl s300 を使ったゲル濾過,Protein A affinity columnを使用)ハイブリドーマ上清のスクリーニング抗原として使用した。手術摘出された卵巣癌組織を免疫原とし,卵巣癌ICに反応すると同時に多数の正常のヒト末梢血より精製したICに反応しないクローンを選んだ(positivc-ncgativc scrccning)10回の細胞融合の結果,前者に比較的強く反応し,安定して抗体を産生したのは7クローンのみであった。そのうちF3,H5,9G9,20E1,2F11の5クローンは,いずれも正常ヒトICに比べ卵巣癌ICに70%以上の頻度で強い反応性を示した。それに対し7E2,11E3は頻度は低いが,強い反応性を示す卵巣癌ICが見いだされた。卵巣癌関連ICの血清診断を目的として,Protein AをcoatしたELISA microplatcを使い,これらのモノクローナル抗体で特異的IC検出系(sandwich ELISA)を作製した。その結果,2F11及び7E2で検出される特異的ICが,正常血清に比べ明らかに増量している卵巣癌症例が見られた。それに対し,他の5クローンで検出されるICは必ずしも卵巣癌末梢血で増加してない事実が判明した。卵巣癌無血清培養株であるHOC/BRの培養上清中に,これらのモノクローナル抗体が反応する抗原分子が存在するか否かを調べた。 (competitivc inhibition ELISA)その結果,透析・濃縮されたこの培養上清中には2F11,7E2,H5の反応を阻害する分子が存在することが確認され,これらのモノクローナル抗体の対応抗原は実際の卵巣癌でも可溶性成分として産生されている可溶性が強く示唆された。
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