研究概要 |
1.鼻副鼻腔粘膜で発現しているムチンmRNAを決定するために、手術時に得られた鼻副鼻腔粘膜からRNAを抽出し、ノーザンブロットし、ムチン遺伝子のcDNAであるMUC2,4,5B,5Cのプローブにてハイブリダイゼーションを行なった。その結果、MUC2,4,5B,5Cは全て鼻副鼻腔粘膜に発現しているが、その発現量には、差があり、MUC5Bが最も強く、MUC2が最も弱く発現していた。更に各ムチン遺伝子の発現の関係を調べた結果、MUC4とMUC5Cとの間に正相関がみられた。 2.ムチンmRNAの発現が何により制御されているかを調べる目的で、1.で使用したノーザンブロットをインターロイキン8(IL-8)のcDNAプローブにてハイブリダイゼーションした。IL-8の発現はムチン遺伝子の発現に比べると弱いものであったが、半数以上にIL-8の発現がみられた。IL-8の発現はMUC4及びMUC5Cの発現との間に正の相関があった。このことは、好中球走化性因子であるIL-8がある種のムチンの発現を調節している可能性を示唆する。基礎実験としてIL-8mRNAが中耳腔と鼻副鼻腔において発現していることは、RT-PCRを用いて検討し確かめた。 3.微量の組織中のムチン遺伝子の発現を簡便に調べるためにRT-PCRにてMUC2とMUC5の発現を調べた。その結果、MUC5は全例で発現していたがMUC2は一部の組織でしか発現していなかった。これより鼻副鼻腔においてはMUC2よりMUC5の方が発現が多く、このRT-PCR法はムチン遺伝子の発現を知るよい方法と思われた。
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