研究概要 |
親子間の生体肝移植におけるHLAclassII遺伝子型適合性が術後長期生存例の免疫抑制管理に及ぼす影響について検討するため、レシピエントとドナーのHLAclassIIのDRB1,DQA1,DQB1,DPB1の遺伝子型をPCR-RFLP法で解析し、その適合性と臨床経過を比較検討した。 術後1年以上の観察期間を経た42例の生体肝移植症例について、ドナーとレシピエントの末梢血からリンパ球を分離しDNAをフェノール抽出した。1μgの試料DNAをDRB1,DQA1,DQB1,DPB1遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRで増幅し、8種類の制限酵素で処理後電気泳動し遺伝子型を決定し、血清学的タイピングの結果と比較検討した。またDNAタイピングの適合性と臨床所見を比較検討した。血清学的HLAタイピングではDNAタイピングの結果と比較すると、DR抗原で15.6%、DQ抗原で13.6%のミスタイピングを認めた。42例中7例(17%)に急性拒絶反応がみられたが4種類の遺伝子型の適合度とは相関しなかった。移植後12ケ月までのタクロリムスの投与量は遺伝子型の一致している症例の方が投与量が少ない傾向にあった。またステロイドの投与日数は、それぞれの遺伝子型が一致している症例で短い傾向にあった。タクロリムスの血中濃度を比較するとDRB1が一致している症例で9ケ月、12ケ月で有意に低値であった。逆に総ビリルビンとγ-GTPはDQA1の一致している症例で術後6ケ月で有意に高値であった。 血清学的なタイピングではミスタイピングが認められ、適合性の正確な評価にはDNAタイピングが重要である。遺伝子型の適合性は急性拒絶とは相関を認めなかったが、術後長期の免疫抑制管理には遺伝子型の適合度の検討が有用であることが明かとなった。
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