研究概要 |
本研究の成果をまとめると次のようである。 1.咬合性外傷と炎症との合併による歯周組織破壊のメカニズムの解明:(1)炎症と咬合性外傷合併時のポケット内歯周病原性細菌の状態を知るために,サル2匹の臼歯をコントロール群(ソフトフッドのみ),炎症群(歯肉辺縁に綿糸結紮),炎症と咬合性外傷の合併群(綿糸結紮と矯正用elastric挿入による側方力)に分け,臨床診査およびポケット内細菌の総菌数と,Porphyromonas gingivalis,Prevotella intermedia,Actinobacillus actinomycetemcomitansの菌数と割合を,6週間にわたり調べた。その結果、炎症と咬合性外傷が合併すると炎症のみに比べ,Clinical attachment loss (CAL)と骨吸収は増加したが,細菌総数,3菌種の菌数と割合には明確な差がなかったことから,CALや骨吸収の増加には細菌の変動よりも,咬合性外傷が大きく作用するのではないかと考えられた。(2)咬合性外傷による歯周組織破壊に炎症と咬合性外傷の程度がどのように影響するかを知る目的で,サルの歯周組織に炎症と咬合性外傷の程度を変えて合併させ,臨床的ならびに病理組織学的に観察した。その結果,両者の合併群は,炎症のみの群に比べ attachment lossと歯槽骨吸収とが多く,さらに炎症の強い群が大きい傾向を示したが,咬合性外傷の程度による差は明確でなかった。このことは咬合性外傷と炎症が合併した場合,咬合性外傷がある程度以上強くなれば,その強さに多少差があっても組織破壊に大きな差を生じないことを示している可能性があり,今後咬合性外傷の誘導法を含めてさらなる実験を行い,解明していく必要がある。 2.歯周病患者のBruxism習癖ならびに顎運動と筋活動の検討:(1)K6 Diagnostic System(K6DS)を用いて歯周炎患者40名と健常者18名の開閉運動路,運動速度,咬頭嵌合位の安定性,筋活動など咬合機能状態を分析した結果,アンケート診査と臨床診査では両者間に有意差はなかったが,K6DS診査では歯周炎が進行すると終末位速度が低下する傾向が著明で,咬頭嵌合位への収束性と最大咬みしめ時の筋活動も低く,咬頭嵌合位が安定せずBruxism行っている可能性が高いと思われた。(2)加藤が開発した睡眠中の咬筋活動と咬合接触を自宅で記録し大学で分析する装置をさらに改良し,記録した筋活動と咬合接触状態からBruxismの様相を自動解析するシステムを作製した。改良した装置は,ロジック化装置を用いて,EMG値と咬合接触振動の電圧を3段階に分け,単位時間(2秒)毎に活動量を記録し,EMG値と加速度値の組み合わせと並び方によって,どの種のブラキシズムがどの程度の頻度と時間で行われたかを計測する。この装置を用いて被験者24人を分析した結果,Bruxismのは次の2つに分類できた。パターン1:咬合接触が連続しておりgrindingと思われるもの,パターン2:咬合接触が初期にのみ観察されその後発現せずclenchingと思われるもの。さらに両パターンとも筋活動のレベルにより,low,highの2通りに分類でき,本装置を用いることによりBruxismの診断が容易となった。
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