研究概要 |
成人性歯周炎患者におけるT細胞機能を明らかにすることを目的として,末梢血リンパ球の自己リンパ球混合培養反応(AMLR)とT細胞サブポピュレーションの表現型についての検索を行いながら,歯周外科処置時に採取した歯周炎病巣歯肉組織におけるCD4^+CD45RA^+T細胞を中心とするT細胞サブポピュレーションについて検討を行った。以下に,集積された結果を配列した。 1.臨床的に成人性歯周炎と分類される患者群(被験30名)の中に,末梢血リンパ球のAMLRの低下がみられる患者群(13名;43%)が存在し,これらの患者群でのAMLRの低下は末梢血T細胞サブポピュレーションのCD4^+CD45RA^+CD45RO^-細胞率と関連することが強く示唆れた。 2.AMLR値の低下が観察された患者群と,観察されなかった患者群との間で,年齢および臨床的パラメーターに関して統計学的な有意差は認められなかった。 3.歯周炎病巣歯肉組織中のCD4^+T細胞サブポピュレーションの解析では,末梢血と比較してCD45RA^+CD45RO^-細胞率が低くCD45RA^-CD45RO^+細胞率が高いことが明らかとなり,歯周炎病巣歯肉局所でナイーブT細胞→メモリーT細胞へのT細胞サブポピュレーションの機能的なシフトが惹起されている可能性が示唆された。しかし,AMLRとの有意の関連性は認められなかった。 4.歯周炎病巣歯肉組織では,末梢血中ではほとんど認められないCD4^+CD45RA^-CD45RO^-T細胞あるいはCD4^+CD45RA^+CD45RO^+T細胞が存在することが明らかとなった。 5.歯周炎病巣歯肉組織中で特に高いCD4^+CD45RA^-CD45RO^-T細胞率を示す患者群ではいずれも低いAMLR値を示したことから,病巣局所でのこのT細胞サブポピュレーションと末梢血リンパ球のAMLRの反応性が関連する可能性が示唆された。
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