研究概要 |
近年,口腔外科領域において長時間手術や高齢者の増加に伴い術後呼吸器合併症が少なくない.術野が気道にあることから術前に呼吸器障害のない症例においても術後呼吸器合併症を起こす可能性が推測される.しかし,本領域における術後の呼吸管理基準についての報告は見当たらない. 本研究では,歯科大学および歯学部附属病院での現況を把握し,口腔外科手術後の呼吸管理を行う上で術後肺合併症を予測・予防するためにどのように管理すべきかについて検討し考察を加えた. その結果,歯科大学および歯学部附属病院の92.3%で歯科麻酔医による術後管理が行われており,全身麻酔症例の4.3%が麻酔時間10時間以上の長時間症例でほとんどが悪性腫瘍に関わる手術であった.しかし,術後呼吸管理の指標を設けている施設は少なく,人口呼吸器を有する施設は半数以下であった. 本学附属病院では約4.8%が長時間症例で奥津らの術後肺合併症予測のスコアによるとそのうち約97%が何等かの術後肺合併症発生の可能性を持っていたが,実際重篤な合併症は発生しておらず術後人口呼吸器による管理を行うことで免れたものと推測する.よってこれらの症例には術後最低24時間の予防的人口呼吸が必要と考えられた.特に高齢者では術前からも呼吸機能低下が存在し,長時間手術でなくとも術後肺合併症の発生率は高くなると考えられる.術後は術前に比較して換気量が低下するが特に30%以上の術後肺活量低下がみられる場合は予防的人口呼吸の適応となると考えられた.
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