研究概要 |
本研究は,成長期から老齢期までの種々の月齢のラットを用い,その加齢による歯周組織の組織学的変化について検索することを目的とした。材料として1,4,9,16,24ヵ月齢のFischer系雄ラットを用いた。テトラサイクリンとカルセインで硬組織内時刻描記を行い,非脱灰研磨切片を作成し,コンタクトマイクロラジオグラフィーを撮影後,共焦点レーザー顕微鏡で観察した。また一部の試料は,脱灰後,シュ石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)を検出した。(結果)観察は,上顎第一臼歯と第二臼歯の根間中隔と第一臼歯の槽間中隔を中心に行った。第一,第二臼歯間の槽間中隔は加齢とともにその幅を減少し,9ヵ月以降では根尖側の骨が吸収され,消失する像も観察された。一方,歯根膜腔の幅は加齢に伴い減少した。鼻腔底の骨の厚さは,4ヵ月齢まで増加していたが,それ以降ではあまり変化はみられなかった。また,9ヵ月齢までの標本では,根間中隔と槽間中隔の歯槽頂部遠心側の表面に二重のラベリング像が観察されたが,そのラベリング線の間隔は増齢に伴い狭くなり,16カ月齢以降では一重のラベリング像が近心,もしくは遠心側の骨表面に不規則に認められる程度であった。一方,TRAP陽性細胞は,根間中隔と槽間中隔の近心側骨表面に主に認められたが,4ヵ月齢以降では,TRAP陽性細胞の数は少なくなり,16カ月齢までその局在性にさほど変化を認めないものの,24カ月齢になると遠心側の骨表面にもTRAP陽性細胞が認められるようになった。このように,生理的歯の遠心移動に伴う歯槽骨のリモデリングは24カ月齢まで生じていることが明かとなったが,その活性は9ヵ月齢より徐々に低下していることが示唆された。今後以上の所見をもとに,加齢に伴う歯の移動の変化について検索するつもりである。
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