研究概要 |
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJDと略)の病原因子としてプリオン仮説が提唱されている。プリオン蛋白遺伝子の点変異が、家族性CJDで検出されてから、プリオン蛋白遺伝子の検索はCJD症例で注目されるようになった。我々は日本人のCJD患者を中心とする初老期痴呆患者の中で新しくcodon105,codon102/219,codon145,codon178,codon180,codon210,codon232の変異と3種の挿入変異(96bp,144bp,168bp)を見いだした。これらのうち、異常プリオン蛋白がシナプスに沈着する型としてcodon178,codon180,codon232の変異があり、細胞外にアミロイド斑として沈着する型としてcodon105,codon102/219,codon145,挿入変異があげられることを明らかとした。シナプス型は臨床的に急速に進行する痴呆として特徴づけられ、一方アミロイド斑の沈着する局所症状より始まるゆっくりと進行する痴呆がその特徴であることを報告してきた。さらにcodon145の変異がstop codonであることを利用し、野生型プリオン蛋白と変異型プリオン蛋白の動態を患者の脳内で解析したところ、変異型プリオン蛋白のみから細胞外のアミロイド斑が形成されることを見いだした。つまり変異型プリオン蛋白のみから異常なアミロイド斑形成が行われていることを証明した。この報告は、1994年アメリカ、イタリアのグループが他の変異で追試を行い再現性を確認している。さらに感染実験をそれぞれの変異で行い、現在のところシナプスをおかずプリオン病からの感染実験の成功率は非常に高いもので、これを比較し、細胞外のアミロイド沈着型では低いという結果も得ている。
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