研究概要 |
1.氷結晶の表面がオゾン分子の破壊反応に及ぼす影響を見積もるための基礎実験を実施した。氷結晶の表面微細構造,及び表面吸着異分子層の構造と生成速度を見積もるための手段として,表面でのレーザー光の反射を利用した偏光解析法と表面第2高調波発生(Second Harmonic Generation,SHG)法を組み合わせた測定系を構築した。特に,結晶表面の分子の配列と配向に敏感なSHG法は本研究により氷結晶表面に初めて適用された。その結果,注意深く作製した良質の表面を使用すると微弱ではあるがSHGが検出された。一方,氷試料をHC1等のガス雰囲気中に置くことができる低温,真空チャンバーを作製した。このチャンバーに上の測定系を組み込むことで,氷表面でのオゾン破壊反応速度の定量的な見積りが可能になった。 2.氷結晶表面でオゾン破壊反応は,氷結晶の分子レベルでの表面構造と密接に関連する。このため,分子動力学法による氷結晶表面の計算機シミュレーションを実施した。その結果,氷表面にはかなりの低温度まで分子配列の乱れた薄い遷移層が存在することが明 らかになった。このような遷移層の存在は,HC1やHC1NO3などのフロン(fluorocarbon)ガスの破壊反応による中間生成物を効率よく氷結晶に吸着する作用を果たすと考えられる。また,この遷移層と氷結晶との界面での構造に面方位依存性が存在することが明らかになった。この結果は,氷表面によるオゾン破壊の活性度が面方位により異なっても良いことを意味している。すなわち,氷晶形状によりオゾン破壊の活性度が異なるとの従来の指摘を支持する。
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