研究概要 |
ダイベンゾパラダイオキシン(Dと略記)フエノキサチイン(OSDと略記、Dの一方の酸素が硫黄)、チアンスレン(SSDと略記、Dの両酸素の硫黄)骨格を有する中性、酸性、塩基性物質について、それらの生物活性をin vitroならびにin vivoのレベルで検索した。【1】発癌プロモーターのTPAによるE-Bウィルス早期抗原発現を指標とする発癌プロモーション実験において、種々の中性D誘導体がいずれも発癌プロモーション抑制活性を示すことを見出した。特に2,7-ジクロロ-Dは強い活性を示し、TPAの500倍のモル比で80%以上の抑制を示す。しかも32ナノモルでもリンパ芽細胞に対する毒性は認められない。【2】酸性のD誘導体、D-1,6及び2,7-ジカルボン酸、及びそれらのメチルエステル、2,7-ジスルホン酸、2,7-ジメチル-3,8-ジスルボン酸、1,6-ジメトキシ-3,8-ジカルボン酸、及びそのメチルエステルも顕著な抗発癌促進活性を示す。D自身は殆ど活性を示さないが、1,6-ならびに2,7-ジメチル-D、1,6-ジメトキシ-3,8-ジメチル-D、1,6-ジメトキシ-D-3,8-ジアルデヒド、2,7-ジメチル-3,8-ジニトローD、塩基性の2,7-ジメチル-3,8-ジアミノ、1,6-ジメトキシ-3,8-ジエチルアミノ-Dも抗発癌促進活性をもつ。これらのうちで特に活性の顕著なのは、D-2,7-ジカルボン酸メチルエステルであり、TPAに対して100倍のモル比で発癌促進を80%以上抑制する。【3】アオツヅラフジのアルカロイドtrilobine、isotrilobineはTPAに対して100倍のモル比で発癌促進を夫々60%、及び50%抑制する。この際、リンパ芽細胞の生存率は夫々40%、60%である。【4】SSDやOSDは、TPAに対し1000倍のモル比で発癌促進を完全に抑制する。両者ともこの濃度では、リンパ芽細胞に対して毒性を示さない。
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