研究概要 |
本試験研究においては,可視・近赤外領域(400〜2500nm)の反射スペクトルを,高波長解像度(波長分解能2〜6nm)で,迅速に(測定所要時間約8秒)測定出来る,小型・軽量(228×308×172mm,8kg)の携帯用測定装置(通称ジオセンサー)を開発した.初年度のほとんどは,試作機の製作に費やされ,次年度は,室内および野外において性能試験が繰り返された.その結果,本機は,400〜700nmおよび2400〜2500nmの領域においては反射スペクトルの再現性が多少悪いものの,700〜2400nmの領域においては,解像度,再現性とも設計時の要求を満たすものであることが確認された.また,次年度の後半から最終年度にかけては,ジオセンサーの野外地球科学への応用について,様々な可能性が追及された.まず,様々な岩石についてその反射スペクトルが測定され,550および900nm付近に存在する3価の鉄に起因した幅の広い吸収,1100nm付近に存在する2価の鉄に起因した幅の広い吸収,1400および1900nmに存在する水に起因した比較的鋭い吸収,1400,2200,2450nm付近に存在する水酸イオンに起因した鋭い吸収,2350nm付近に存在する炭酸イオンに起因した鋭い吸収などが,ジオセンサーにより容易に識別出来る事が明らかになった.次に,特に水の吸収について,その吸収強度がどの様な要因により変化するかを実験的に検討した.その結果,水の吸収強度は主に,体積含水率,構成粒子の粒度,不透明粒子の含有量などに影響されることが明らかになった.こうした結果に基づけば,例えば体積含水率が比較的一定した細粒堆積物に対象を限定すれば,水の吸収強度は不透明粒子の含有量に比例し,不透明粒子が特定できれば,ジオセンサーでの測定からその含有量の推定が可能である.現実のピストンコア試料について,この手法による有機炭素および黄鉄鉱含有量の推定が行なわれ,ジオセンサーの有効性が示された.
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