研究課題/領域番号 |
05508003
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研究種目 |
試験研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内海 博司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20025646)
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研究分担者 |
佐々木 正夫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (20013857)
星 正治 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (50099090)
小林 捷平 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (80027466)
藤田 薫顕 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (60027422)
宇津呂 雄彦 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50027421)
生島 隆治 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (80027458)
斉藤 真弘 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (40027454)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
36,800千円 (直接経費: 36,800千円)
1994年度: 13,100千円 (直接経費: 13,100千円)
1993年度: 23,700千円 (直接経費: 23,700千円)
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キーワード | 低エネルギー領域の中性子 / 中性子フィルター / 対型イオンチェンバー / 24keV中性子 / 染色体異常 / 毛細血管拡張性運動失調症 / 中性子フイルター |
研究概要 |
低エネルギー領域の中性子の生物効果に関しては、従来より実験データがなく、中性子の人体影響の評価や、癌治療など中性子の医学利用の実験面で大きな未知要因となっている。本研究の目的は、京都大学原子炉のB-1実験孔を利用して、各種の中性子フィルターを組み合わすことによって純度の高い中速中性子を取り出し、生物照射が可能な標準中速中性子スペクトル場を作製しようとするものである。 本年度は、鉄フィルターを基本とした24keV中性子の生物照射に重点をおき進められた。生物照射はイオウフィルター(20cm)とホウ素粉末フィルターを追加したFe(45)Al(35)S(20)照射体系で、最終フィルターより46cm後方、コリメータ出口より25cm前方の位置で行なわれた。その位置での対電離箱(による中性子組織吸収線量は5.5rad/h、γ線組織線量は2.3rad/hである。陽子反跳計数管による測定から、24keV中性子束は5.0x105n/cm2/s(その組織吸収線量は0.40rad/h)であった。 このように中性子線量は低いが、Fe(45)Al(35)S(20)照射体系での中性子のカ-マ寄与率は、50keV以下のエネルギーに対して約22%、100keV以下のエネルギーの中性子に対して約75%と推定された。このようにB-1実験孔は、従来より実験データのない100keV以下のエネルギーの中性子の生物効果を調べるためには満足できる照射場であると考えられる。 佐々木正夫らのヒトの抹消血のリンパ球を用いた染色体異常の解析から、このフィルター中性子が核分裂中性子と等しい大きさのRBE(10radで約10以上のRBE)を持つことが示された。また、放射線高感受性のヒト遺伝病毛細血管拡張性運動失調症(AT)の細胞を用いた内海らの予備的データも、生存率30%でのRBEが約5〜10であることが示された。このように24keV中性子の生物効果が非常に大きいことが示された意義は大きい。 本試験研究を通して、B-1実験孔が準24keV中速中性子照射場として完成したことから、今後の本格的な生物効果の研究が待たれるところである。京都大学原子炉実験所は全国共同利用研究施設であるところから、本照射場は、中性子線の生物作用に関する基礎実験から人体影響評価までの広い分野の共同研究を促進するものと期待される。
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