研究概要 |
板・殻のような高強度薄肉材料の成形においては,成形限度に至る前に座屈や面ひずみなどの面外変形,しわ,が発生し製品の価値を低下させると同時に成形性を著しく制限する.本研究では,高付加価値を有する製品の加工性を向上させることを目的とし,板,殻などの薄肉材料の成形過程におけるしわ発生を理論的ならびに実験的に詳細に検討し,それらの発生に影響を及ぼす主要な因子および発生の抑制・防止条件を明らかにする.そのために, 1.各種形状の薄板に対して各種組み合わせ応力を負荷し,それによってしわや面ひずみなどの面外変形の発生限度を,変形の分岐現象としてとらえ,分岐の発生条件を求めた.つぎに,それを解析するプログラムを作成した. 2.各種条件下で薄板の成形限度をしわや面ひずみの発生面から予知するために,広範な組み合わせ応力下でのしわや面ひずみ発生限度をしわ発生限度図(WLD)として表示し,比較的限られた領域の応力状態に関する情報からしわ発生限度が予知が可能となった.このことは,現在成形性の予知のために広く使われている,くびれの発生を成形限界とする,成形限度図(FLD)と同様な形式での利用が期待できる. 3.シミュレーション結果の妥当性を検討するための実験と面外変形の検出法の検討を行ない,しわ発生点は与えられた面内応力のもとで曲げ変形が急増する点に対応することが確認された. 4.通常プレス成形は曲面の工具を用いて行なわれるので,その曲率が大きい場合,曲率のWLDに及ぼす影響を検討する必要がある.浅い殻に適用される殻理論によって定式化された1.の分岐条件をこのような場合に一般化して分岐条件を求めた. 5.シミュレーションをより完璧なものとするために,実験に使用する薄板の構成式を求めシミュレーションに導入しやすい形式で表示した. 6.実成形プロセスのシミュレーションに導入しやすい形式で,WLDを式の形で表現した.
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