研究概要 |
超音波送受信子を組み込んだノズルから工作物または工具へ向けて切削油剤を流し,超音波送受信子と被測定物表面までの距離を、または被測定物の厚さを,超音波が伝播する時間で測定する方法を開発・確立するために,本年度は以下のような研究を行った.(1)機械加工で段差を付けた試験片を表面粗さ計で測定すると同時に、加工液中にその試験片を沈め,超音波の伝播時間の差から段差量を測定する.なお、その際に,表面粗さを変化させたり,研削加工やフライス加工などの加工の違いについて調べる.(2)試験片に超音波を投射する角度や,試験片の曲率による影響について調べる.(3)加工液の流速や圧力が測定精度に及ぼす影響について調べる.(4)研削加工や放電加工時の工作物厚さの測定を試みた.その結果,以下のような有用な結果が得られた.(1)測定面の表面粗さが繰返し測定精度に及ぼす影響は,研削加工面(Ra0.2〜0.28μm)では標準偏差として0.7μm,フライス加工面(Ra4.4μm)では3.7μmとなり,中粗仕上げ加工では,ほぼ被測定面の表面粗さ程度の標準偏差で繰返し測定ができる.(2)試験片に超音波を投射する角度としては,一般の超音波送受信子では2度,音響レンズを付けたもので5度までなら測定ができる.さらに,直径20mmの,円柱表面でも平面の場合の50%の反射波強度が得られた.(3)切削油剤の温度上昇と共に音速が変化するが,同時に音速を測定することで1μmいないの測定精度が得られた.また,切削油剤が水の場合には流速150m/s以下,圧力3kPa以下ではその影響はほとんど無い.(4)研削加工時や放電加工時の工作物厚さを加工面の表面粗さ程度の誤差で測定できた.特に,放電加工中にノイズの影響を受けずに測定できることが分かった.また,立てフライス盤に取り付けられたエンドミルの波面の形状を回転中に測定できることが分かった.
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