研究概要 |
低基板温度下でダイヤモンド膜を合成することを目的として,2つの陰極間に1つの円筒状陽極を配置した新しい方式の直流放電プラズマ発生装置と,これに最大3テスラの強磁場を作用させることのできる超電導マグネットを製作し,ペニングイオン源を利用したダイヤモンド膜合成装置を試作した. 製作した超電導マグネットは最大3テスラの磁場を発生し,直流放電装置は1テスラの磁場を印加した状態で10^<-3>TOrrの低真空下でも放電可能であることを明らかにした. 次に,メタンガスを原料として炭素薄膜の合成を行い,薄膜合成装置としての評価を行った.基板にはシリコンを用い,水素ガスに対するメタンガスの流量比を5%と設定して,直流放電装置内の圧力を0.67Paとし,12時間の合成実験を行った.このとき,製作した超電導マグネットにより放電部に1テスラの磁場を印可した.その結果,基板温度35℃の基板表面には,濃い紺色を呈した電気伝導性を示さない薄膜が析出した。この膜をラマン分光分析で分析した結果,ダイヤモンド状炭素膜であることがわかった.これは,ダイヤモンド構造を含む炭素膜であり,本装置によるダイヤモンド膜合成の可能性を示すものと考えられる.ただし,本装置で合成される膜は,気相中での原料ガスの反応と電極材料のスパッタリングの2つの反応により合成されることがわかり,今後,電極材料の薄膜中への混入を防ぐなどの課題があることが明らかになった.
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