研究分担者 |
桜井 正俊 オーエスジー株式会社, 研究部開発課, 係長
松室 昭仁 名古屋大学, 工学部, 講師 (80173889)
中本 剛 名古屋大学, 工学部, 講師 (30198262)
新美 智秀 名古屋大学, 工学部, 助教授 (70164522)
羽根 一博 名古屋大学, 工学部, 助教授 (50164893)
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研究概要 |
硬質でしかも基板への密着性の高い機能性膜,すなわち,SKD11基板上にWCからTiNへ成分を変化させる傾斜機能コーティングを高周波マグネトロンスパッタリングで作成し,その膜の評価を各種の比較実験および解析で行い,以下を明らかにした. (1)傾斜機能コーティング膜では最下層でSKD11基板に最初にスパッタ蒸着されるWCは,WCターゲット材の稠密六方構造ではなくNaCl構造のβ-WC1-xとなった.ターゲットと異なる構造をもつ理由としてはWCの融点に比べ低い基板温度によるWCの急冷作用とCのSKD基板への拡散などが挙げられる. (2)SKD11基板上にスパッタ蒸着されたβ-WC1-xは(111)および(200)に集中した配向をとり(200)でX線回析強度が最高となる. (3)傾斜機能コーティング膜中の傾斜層には,(WTi)C1-xおよびC0.3N0.7Tiの存在の可能性がある.傾斜層のX線回析の半価幅の大きさからかなり結晶が歪んでいることが示唆され,これに伴い,格子定数も上下の単一層より傾斜層のほうが大きい. (4)傾斜機能コーティング膜は(111)面方位が最高強度となりWC層の最高強度の(200)面方位から変化していた.この配向の変化の原因は傾斜層にあり,(111)から(200)へ最高強度を示す回析面の変化は傾斜層において起きている. (5)走査電子顕微鏡により傾斜機能膜の断面観察を行い,TiN層,傾斜層,WC層を確認でき,その構造はかなり緻密であることがわかった.一方TiN層はSKD基板上では隙間の多い荒い構造をとり,傾斜層上の構造とは全く異なった.また,基板とWCとの界面は強固に付着している様子が伺えた. (6)オージェ電子分光分析により,傾斜機能コーティングの膜成分は予想通りであることを確認した.Cの成分変化からSKD基板にC原子が拡散,固溶したため,急冷に加えWCがβ-WC1-xの形で発生した影響もあることを実証した.
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