研究概要 |
本研究は旋盤加工での切削工具の振動から得られる振動スペクトルをパターンとしてニューラルネットで学習および認識することにより切削中の異状を検知するシステムの開発を目的とした。平成5年度は検知システムの設計と構築をし,振動スペクトルから得られる特徴量(スペクトルのピーク値とその振動数)で再生びびり振動の発生を検知する方法の提案,および振動スペクトルをパターンとしてニューラルネットで学習し,びびり振動を検知する方法の提案を行った。実験は二次元切削で,切削幅は1.0〜4.0mm,切削速度は10〜140m/minの範囲で行い,各切削速度ごとに,びびり振動が発生する切削条件からまったく発生しない切削条件まで段階的に切削幅を変えて被削材の振動(変位),動的切削力,工具の振動(加速度)を同時に測定した。振動スペクトルの特徴量で検知する方法では,信号のノイズ成分が少ない被削材の振動で検知をした場合,実験を行った範囲内では認識率(成功率)は100%であったが,信号のノイズ成分が多い動的背分力では認識率は71%と大きく低下した。一方,振動スペクトルからニューラルネットで検知する方法では,被削材の振動で検知した場合は88%と特徴量で検知する方法よりも認識率は低下したが,動的背分力で検知した場合は83%と逆に向上し,信号のノイズ成分の多少にかかわらず約80%以上の安定した認識率で検知ができた。平成6年度は振動スペクトルからニューラルネットで工具逃げ面の摩耗量を同定するシステムを提案した。実験は人工的に工具の逃げ面を削り,異なる摩耗幅を付けた4つの突切りバイトで行った。その結果,振動スペクトルを学習した切削条件(工具の摩耗量を含む)と同じ切削条件では,摩耗幅の検知率(同定の成功率)は約80%で従来の方法と同程度であった。しかし,未学習の切削条件では約30%と極端に低下するため,検知方法をさらに検討する必要があると結論される。
|