研究概要 |
前方の障害物までの複数の距離と方向を同時にヘッドホンを通してステレオ音響とともに,噴流刺激として認識させることが可能な視覚障害者のための視覚代替器を開発し,実用化試験を行った.併せて,2次元のカラー情景把握のためにビデオ速度で距離画像を得ることのできるカラー距離取得装置を考案するとともに,物体形状を認識させるニューラルネットワークの開発を行った. この装置の開発と実用試験から得られた結論を要約すると以下のようにまとめられる. 1.カメラ水平走査線方向だけでなく垂直方向の距離をステレオ音響により伝えることが可能である. 2.垂直2方向に対して得た8点(計16点)の距離を入力することで人間の判断以上の速度で物体形状を教示する手段としてニューラルネットワークが有効なことを実証した. 3.人体に素子を接触させることなく,長時間にわたって距離情報を認識させることを可能とするマイクロ噴流を利用した噴流刺激ディスプレイを開発した.噴流刺激がどの程度の認識率を与えるかについてこの方法を実験的に評価し,距離認識手段のみならず,装置の小型軽量を実現し,かつ非接触で距離を伝える方法として音響による方法以上に有効なことを実証した. 4.ビデオ速度で動作するカラー3次元距離取得装置を開発した.この装置の特徴は,カラー映像信号の入力と同時に距離信号を生成する映像信号処理回路を実現し,動的物体の距離画像の観察を可能としたこと,色のある物体について最低でも60%以上の距離取得率を示し,距離誤差は1.8%以下の高精度を実現したことにある.これらの点から判断して,この装置は距離画像計測装置としても十分実用に供し得ると判断される.
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