研究概要 |
次世代の高密度波長多重(あるいは周波数多重)光通信方式において必要不可欠な狭帯域周波数分離器(狭帯域波長フィルタ)は,その波長フィルタ特性(特に中心波長)が周囲温度に依存して非常に敏感に変動する問題があった.そこで本研究では,温度に無依存な狭帯域波長フィルタの実現を目的として,光路長が温度によって変化しないアサーマル光導波路の開発を目指した. 昨年度の本研究によって,従来の二次元(平板)導波路からさらに三次元(チャネル)光導波路でアサーマル光導波路を設計するための光路長温度係数の計算プログラムを,有限要素法を用いて作成して,これを用いて従来の2%にまで光路長温度係数を低減させた三次元アサーマル光導波路の開発に成功していた.しかしながら,このアサーマル光導波路は波長0.633μmにおいて実現されており,実際に光通信用の狭帯域波長フィルタに適用するには波長1.3μmまたは1.55μmにおいて実現する必要があった. そこで平成6年度では,まず光導波路材料であるNA45ガラス,SiO_2ガラスおよびプラスチック材料PMMAの薄膜状態での屈折率温度係数を,波長1.3μmにおいてマッハツェンダー干渉計を用いて測定した.そして,これらの基礎データを用いて昨年度に開発した設計プログラムによって波長1.3μmでのアサーマル光導波路を設計,試作してその光路長温度係数を測定した結果,従来型導波路の0.1%にあたる9.6×10^<-9>[1/K]にまで低減して赤外波長帯での三次元アサーマル光導波路の実現に成功した. 次に,このアサーマル光導波路を用いた温度無依存狭帯域波長フィルタの実現を目指して,開放型リング共振器回路を設計,試作して,その温度無依存動作の実証を試みたが,測定系の分離能の不足のために,実証には至らなかった.
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