研究概要 |
本研究課題は,半導体デバイスで用いる半導体ウェーハの表面ミクロ構造および表面化学状態を赤外反射分光法で精密にかつ迅速に評価することによって,半導体製造プロセスにおけるウェーハ表面状態を原子レベルで制御する計測法を開発することを目的とした。赤外分光法は他の分光法に較べ,半導体表面状態を評価する上で有効な指標となる水素,炭素,水,有機物の検知またそれらの吸着状態同定に優れている。また,内部反射モードでの赤外分光測定は表面感度が極めて高いという利点がある。これらの特徴を活かした、赤外反射分光法による半導体表面原子制御計測法の開発を目指した。 3年間の研究によって,この計測法を半導体製造ラインに組み込むことを念頭に置き,半導体ウェーハをそのままの状態で真空中,大気中,溶液中のそれぞれの環境下で表面状態計測できる装置を試作し,その有効性を明らかにした。 溶液中評価装置については,フッ酸などの腐食性溶液も導入できるようにし,Siウェーハをフッ酸溶液に浸しながら内部反射赤外吸収スペクトルを測定することに世界ではじめて成功した。フッ酸溶液中ではSi表面は水素化物とフッ化物で覆われており、水洗することによって表面が完全に水素終端されることが分かった。真空用、大気用赤外分光評価装置についてもほぼ当初の計画通り試作に成功し,Siウェーハ表面の自然酸化過程の評価等について興味ある研究成果が得られた。水素終端されたSi表面は大気中に放置すると酸化されるが、表面水素化物の酸化には大気中に水分が関与していることが初めて分かった。 以上、本研究で開発した方法は半導体ウェーハ表面の評価に極めて有効であることが分かった。
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