研究概要 |
本研究では,斜張橋ケーブルのとくに降雨を伴わない強風時に発生する振動(雨無し振動と呼ぶ)に注目し,以下の各項目について考究した。 1.ケーブル姿勢と振動方向の影響 ケーブルの空間的な姿勢はケーブルを水平面に投影したときの風向とケーブル軸のなす角度(水平偏角β),およびケーブルを含む鉛直面に投影したときのケーブル軸の傾き(仰角α)で表される。ケーブルの振動にはこれらの角度の他に振動方向がさらに影響する。ケーブル姿勢と振動方向を風洞内で様々に変化させ,各々の状態で振動応答を計測した結果,振動方向がケーブル周上のstagnation pointとケーブル中心を結ぶ線に直角な方向であるとき最も振動が生じやすいこと,およびケーブル姿勢の影響はβ^*=arcsin(cosα・sinβ)で代表されることが確認された。 2.軸平行突起付きケーブルの応答特性 軸平行突起を設けたケーブルで,特にScruton数が小さい場合には,ある限られた風速域でのみ振動が発生する特性(風速限定型)を示した。同一姿勢における突起を設けないケーブルの応答との比較により,軸平行突起はスパン方向の渦放出の非一様性(3次元性)が強められ,風速限定型の空力振動応答特性が顕在化することが見出された。また,ローリングモードの振動自由度の有無による応答への影響についても検討がなされ,突起付きケーブルではローリングモードが発生し得ることが明かとなった。。 3.乱れの影響 乱流中の軸平行突起付きケーブルの振動特性を検討するため,静止時および強制振動時のケーブル模型表面の非定常圧力を計測し,カルマン渦および風速限定型振動に対応する周波数成分のパワーを一様流,乱流中で比較した。その結果,乱流中ではカルマン渦のパワーが低下する反面,カルマン渦の間欠的な放出を特徴づけるより低周波数のパワーが逆に増加し,乱流中で渦放出の3次元性が強められる可能性が指摘された。
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