研究概要 |
ニッケル-水素化物電池の負極の性能を向上させるために,負極材料として用いる水素吸蔵合金の表面を無電解あるいは電気めっき,還元剤を含むアルカリ水溶液での処理,あるいは金属酸化物との混合によって修飾した.また,水素吸蔵合金の構成金属を異種金属で部分置換することや,AB_S,AB_2などの化学量論組織から合金組成をずらすことによって合金本体の組成制御を行った.これらの表面修飾や組成制御が水素吸蔵合金の電気化学的特性や負極性能に及ぼす影響を検討するとともに,合金上における水素電極反応や合金内の水素の挙動などの基本的特性を検討した.本研究で得られれた知見を総括すると,以下のとおりである. 1.水素吸蔵合金の電気化学的特性は、構成金属を異種金属で部分置換することあるいはAB_S,AB_2などの化学量論比から合金組成をずらすことによって向上する. 2.希土類系水素吸蔵合金の表面を種々の金属や金属酸化物で修飾することによって,水素電極反応に対する触媒活性と高率充放電能は改善できる。 3.ラーベス相水素吸蔵合金の表面を還元剤を含むアルカリ水溶液で処理すれば、初期活性化が容易になり、高率放電能が向上する. 4.電位ステップ法で評価した水素吸蔵合金中の水素の拡散係数は,構成金属を原子半径の小さい異種金属で部分置換すると増大する. 5.水素吸蔵合金の組成を化学量論比からずらすと,合金中の水素の拡散の活性化エネルギーは減少し,放電高率が高くなる. 以上のように,水素吸蔵合金を表面修飾あるいは組成制御して負極性能を調べるとともに,合金上における水素電極反応や合金内の水素の挙動などの基本的特性を解明し,ニッケル-水素化物電池の高性能化のためのいくつかの水素吸蔵合金の設計指針および負極の開発指針を提供することができた.
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