研究概要 |
初年度では,まずマルチチャンネルディテクタ(MCD)を用いた放射軟X線分光(SXES)測定を可能にするための計画の机上案を立案した.そして,申請の設備備品費により購入した備品を用いて,従来法ではある一点(hν_1)のフォトン・エネルギーの計測からエネルギースペクトルを測定していたものを,一定のエネルギー範囲(hν_1〜hν_2)にわたって同時測定を可能とし,その装置がエネルギー分解能的のみても従来器あるいはそれ以上の性能をもつものであることを明らかにした.平成6年度では,前年度の研究で準備した放射軟X線分光(SXES)装置を用いて,入射角変化(IAV)法,入射エネルギー変化(IEV)法の薄膜接合系の非破壊分析法としての有用性を示した. 超微細コンタクト形成の基礎研究では遷移金属,例えばFe,を用いたSiとの接合について低温固相反応による遷移金属シリサイド膜形成過程を調べた.その結果,Fe(薄膜)-Si(基板)接合系では,熱処理温度とともにFeリッチなシリサイドからFeSi_2へと変化すること,また,2相のシリサイドの混在する温度領域のあることなどが明かとなった.このような熱処理温度とシリサイド形成機構との相関関係から,シャロ-な超微細コンタクト形成のための基礎知識が得られたものと考える. また,Pd,Ni,Ptといういずれも価電子が10個ある遷移金属のモノシリサイド(PdSi,NiSi,PtSi)の構造と電子状態の関係をSXESにより調べた.これらは同じ結晶系に属しているが,3つのシリサイドの価電子帯構造は,金属(M)-Si,Si-Si原子間距離と密接な関係のあることが明かとなった.つまり,何等かの工夫により,シリサイドの価電子帯構造,即ち電気特性を制御できる可能性のあることが示された.これは,今後超微細コンタクトを形成する上で重要な情報を与えるものとなるであろう.
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