研究概要 |
半導体光触媒を用いた光殺菌システムにおいて,酸化チタン微粒子が優れた殺菌作用を示すことが分かった.本研究では,殺菌対象菌として,Saccharomyces cerevisiae(細胞),Escherichia coli(細胞),Bacillus stearothermophilus(胞子)を取り挙げ,酸化チタン微粒子懸濁系および固定化系において殺菌試験を実施し,以下の結果を得た. 1)高圧水銀灯を用いた光照射下(波長域:365〜579nm)において,有効な細胞・胞子の死滅速度を得るためには,酸化チタン微粒子と空気の通気による溶存酸素の存在が必要であった. 2)光反応槽内での平均光強度が大きくなるにつれて細胞・胞子の死滅速度は向上し,また,溶存酸素は細胞・胞子に対する攻撃種となる酸化剤ラジカルの生成に寄与することが推定された. 3)細胞・胞子の死滅機構として,酸化チタンの光励起によって生成される酸化剤ラジカル濃度と胞子濃度に関する2次反応速度論を適用し,さらに,1ヒット性多重標的モデルあるいはSeries-Eventモデルを組み合わせることによって,細胞・胞子の死滅速度に対する光強度の効果を定量的に相関できた. 4)連続殺菌が可能となるように,酸化チタン微粒子をガラス板表面へ固定化し,E.coliの光殺菌試験を実施した.その結果,酸化チタン微粒子固定化系においても有効な殺菌速度が得られ,Series-Eventモデル解析より得られるパラメータ(致死反応回数)は,酸化チタン懸濁系および固定化系で一致した. 5)酸化チタン微粒子懸濁系および固定化系のいずれにおいても,見かけの死滅速度定数と光強度の間には直線関係が見られた.また,酸化チタン濃度あるいは固定化量に関しては,見かけの死滅速度定数に対し最適値が存在した. 以上より,半導体微粒子を利用した光殺菌は種々の微生物に対して有効であり,また,微粒子の固定化を図ることにより,連続殺菌操作に対する基礎的知見が得られた.
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