研究概要 |
本研究では,比較的不安定な金属錯体を中間体として経由させることによって低温で,望むらくは室温で,複酸化物セラミックスを合成するプロセスを確立することを目的とした.具体的には,錯体を形成する配位子としてエチレングリコールおよびヒドラジンを選び,いくつかの複酸化物を,それぞれの金属の水酸化物を経由して合成するのではなく,直接合成するための条件を決定した. エチレングリコールを配位子として用いることによってスピネル構造を持つZnFe_2O_4をバルーン状で合成することができた.加えて,Fe_2O_3のバルーンも合成でき,それとZnOとの反応によってZnFe_2O_4の篭状粒子とすることができた.また,スピネル型LiMn_2O_4を薄膜状で合成することができ,そのリチウム二次電池正極としての充・放電挙動はほぼ既報のものと一致した.塩化ニッケルと塩化ランタンの混合エチレングリコール溶液ををカーボンバルーンヘコーティングした後,酸素中で950℃に加熱処理することによってペロブスカイト型LaNiO_3結晶微粒子からなるバルーンを合成した. ヒドラジンを用いてZnFe_2O_4フェライト微粒子を室温付近で合成することに成功した.ヒドラジンは配位子としてのみでなく,還元剤あるいは塩基としても作用するために,フェライト合成の条件,特に溶液濃度が限られることが明かとなった.これに対して,アンモニアを還元剤として用いた場合には30〜60℃の温度範囲で結晶性の高いZnFe_2O_4微粒子を合成することが出来た.これらフェライト微粒子はグリーンラストと呼ばれる中間相を経由して生成することを明らかにした.また,塩化ランタン水和物の1-プロパノールに溶液にヒドラジンを滴下し沈澱を得た.この沈澱を500℃に加熱処理することによってLaOCl結晶性微粉末を得ることができた.
|