研究概要 |
野外において立木状態で樹木個体のCO_2とH_2Oのガス交換を同時に連続的に測定できる装置の開発を行った。試作品として完成した立木同化蒸散測定装置の概要は,以下の通りである。測定は通気法で,チャンバーの出入り口の二酸化炭素の濃度差と水蒸気の濃度差とから,それぞれ光合成速度と蒸散速度を計測する。二酸化炭素濃度の測定は赤外線ガス分析計により,また,水蒸気濃度は鏡面冷却式露点温度計を用いて測定した露点温度から計算により求める。チャンバー内の湿度が野外の湿度に同調するように,除湿装置を用いてチャンバー内に導入する空気の湿度を制御した。また,チャンバー内外の温度が同調するように,熱交換器を用いてチャンバー内の温度を制御した。測定データ(CO_2濃度,H_2O濃度,気温,光度,葉温)は,コンピュータにより4分間隔で自動収録される。 立木同化蒸散測定装置の精度を検証するために,この装置で得られた単木の蒸散速度を葉面積当たりの蒸散速度に換算して,今まで一般的に用いられているポロメータで測定した葉面積当たりの蒸散速度と比較した。測定は20年生のヒノキ林において行った。立木同化蒸散測定装置による測定木のは樹高は6.2mであり,また,ポロメータによる測定木の樹高は7.5mであった。立木同化蒸散測定装置で測定された蒸散速度の値及び日変化は,ポロメータで測定された蒸散速度の値及び日変化と同様な結果であった。したがって,本研究で試作した立木同化蒸散測定装置は,精度と反応性の両面において,ポロメータと同等な測定結果を生み出すと結論することが出来る。 完成した立木同化蒸散測定装置を用いて,20年生ヒノキ林分のサイズを異にする5個体(樹高4.2-7.5m)において1年間に渡り測定を試みた。その結果,蒸散速度が高いときには光合成速度も高いことが明らかになった。また,水利用効率は,成長期である3月から8月にかけて低く,逆に,成長休止期である9月から2月にかけて高い傾向にあることが明らかになった。さらに,個体の蒸散速度は葉量が多い個体ほど高く,個体の蒸散速度は個体葉量にほぼ比例していることが明らかになった。
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