研究概要 |
高価な市販のブローブを使わずに親子鑑定を行うために,ゲル内で子供のDNA断片を父とされる男性及び母親の過剰のDNA断片でサブトラクトした.先ず親子トリオ及び無関係の男のゲノムDNAをEcoRIで消化した.子供のDNAをfill-inによりビオチン標識し,母・父又は無関係の男の過剰DNA(アルカリホスファターゼ処理済み)と混合してアガロース電気泳動し,アルカリ変性後,競合的に再会合させサブトラクトした.ゲルから1-2kbの断片を抽出しアンカーを付加した後,PCR増幅した.増幅産物中の子供のDNA断片を固相化ストレプタビジンで捕捉し,再PCR後,ドット・ブロット法で検出した. サブトラクションの結果,父子でない場合のみ子供のDNAの一部が残り増幅,検出されるはずであったが,実際には父子関係の有無にかかわらず子供のDNAが検出された.技術的困難の原因はDNA断片の過多・過密にあるかもしれないと考え,反復配列性断片を選択した.即ち,両親及び無関係の男性のDNA並びに子供のDNAの一部をfill-inしビオチン標識した.子供の残りのDNA断片にアンカーを付加した.子供の二種類のDNA断片を,ストレプタビジンを固相化したマイクロチューブの中で混合し,熱変性後,55℃で1分保温し縦列反復配列同士を優先的に会合させストレプタビジンに捕捉させた後,アンカー配列に拠り増幅した.増幅産物をEcoRIで処理し過剰の両親のDNA断片,または母及び無関係の男のDNA断片と混合してアガロースゲル電気泳動し,ゲル内で競合的再会合をさせた.DNAを回収し,Dynabeads-Stretavidinと混合した.その上清をナイロンにドットしてUV照射し,抗チミンダイマー抗体で検出した.その結果,いずれの場合にもDNAは検出され,父子関係の存否を判定できなかった.その原因は,子供の一部のDNA断片同士が急速に再生することにあると推測された.そこで,子供のアンカーPCR産物をPCRでジゴキシゲニン標識したものをブローブとして,母・父(または偽父)・子供のDNAフィンガープリントを検出した結果,父子関係の存否を正しく判定することができ,ゲル内サブトラクションより簡単であった.液相でのサブトラクションによりDNAフィンガープリントブローブを即製する方法を開発した結果,「高価な市販のDNAブローブを使用せずに親子鑑定をする」という最終目的を達成したことになる.
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