研究概要 |
歯科では滅菌器としてオートクレーブが多用されている.しかしオートクレーブの使用には,炭素鋼器具のように,器具が劣化するということのほかに,インプラント材のように処理後においてもその表面に抗原物質が残存するなどの問題が指摘されている.本研究では,酵素プラズマ放電を用いた歯科用滅菌装置の開発を目的として,その特性について調べた.装置として低温灰化用プラズマリアクター(PR-31:ヤマト科学社製)を用いた.制御部は水晶発振による13.56MHzの高周波電力を反応部に供給し、出力は0〜300Wである.酸素流量は50ml/minあるいは100ml/mに固定して実験を行った. ガラス管(外径2mm,内径10.95mm,長さ200mm)をプラズマ処理した際の管内部の温度を,熱電対(直径0.08mm,iron-constntan)にて測定した。その結果,高周波電力が高くなるほど,ガラス管の内部温度は経時的に上昇した. 金属試片(10mm×5mm×1mm)に口腔内由来細菌を1試片あたり100万CFUになるように塗布した.これを5試片作製した.同様に,10万CFU/試片を10枚,1万CFU/試片を10枚作製した.これらの試料を30分間,37℃の恒温槽にて乾燥した後,酸素流量50ml/min,出力電力300W,印加時間10分間の条件にてプラズマ放電中に留意した.その後,試片を1枚づつBHI液体培地3mlに投入して,37℃の好気的条件下で72時間培養した.その結果,25試料いずれも陰性培養であった 新品の切削用バ-を滅菌処理して,バ-の表面構造を走査電子顕微鏡にて観察した.プラズマにて処理したバ-は,オートクレーブや乾熱滅菌器で処理したものと比べて,表面が最も清浄であった 以上より,酸素プラズマ放電は歯科診療室にて使用することを目的とした小型の滅菌装置への応用性が高いと思われた.
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