研究概要 |
本研究においては,まずデータ解析用ワークステーションの導入と解析プログラムの開発・組み込みをおこない研究環境を整えた上で,(1)潮汐歪をふくむ地殻歪の変化と火山活動を結ぶメカニズムの理論的な評価,(2)実際の火山活動の時間変化データの収集,および収集したデータと潮汐との関連性についての詳細な解析,の2点について重点的に取り組んだ.このうちの(1)については,ある一定以上の大きさの,ある特定方位の地殻歪によって火山活動が励起されることと,その歪方位が火山下のマグマ溜りの形状と関係することを,力学的な考察による理論面と,伊豆大島の最近の火山活動を例とした実際面の両方から明らかにした.また,火山の累積噴出量の長期的な時間変化パターンの類型と成因を理論的に考察し、累積噴出量の時間変化を細かく調べることによって,そこから火山が受けた地殻歪の影響の有無や性質に関する履歴を読み取る方法を考案した.また(2)については,歴史記録の豊富な伊豆大島火山について古記録・古文書を系統的に収集した上で文献史学的手法による史料の選別と解析をおこない,噴火史上の中ないし大規模噴火の開始時期が潮汐の14日周期成分と同期している関係を明らかにした.また,雲仙火山の1991年噴火における火砕流発生と潮汐の関係についての詳細な解析をおこなった.その結果,火山活動がある種の臨界状態に達していたとみられる1991年5月24日〜6月12日の期間においては,潮汐によって雲仙火山下の地殻に上下方向または東西方向の圧縮歪が加わった場合に大きな火砕流が発生していた関係を明らかにし,そこからマグマ溜りの形状や火砕流の発生メカニズムを推定した.以上(1)〜(2)の両成果を取りまとめ,潮汐と火山活動との同期現象を噴火予知に応用する際の問題点を明らかにした.
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