本研究では、ゲーデルの不完全性定理が内含する、「表現の内容と形式」に関する本質的な問題の解決の第一歩として、ことに1973年以降急激な展開を見せた「不完全性定理」自体の技術的なsurveyを徹底して行った。こうしたsurveyを行った理由の一つには、こうした近年の成果を正当に評価しかつ広範な見取り図を与えるものが、残念なことに我が国には欠けており、そのために本分野に関しては大幅な遅れをとっている現状を打破する準備を整えることが急務であると考えたことと同時に、一方では不完全性定理が内含し、その技術的な解決のためにはまず哲学的な考察を必要とする「表現の内容と形式」の関係を明らかにすることを試みた。成果は、両者に渡って現時点では十分に満足されるものが得られた。前者に関しては、この20年余りに及ぶ主たる成果をほぼすべて技術的かつ哲学的観点から十分に分析し、その更なる発展の方向を得た。後者については「表現の内容と形式」に関する問題を解決することは、十分可能であるが、そのためには通常の論理言語体系を技術的に二つの方向で拡張すること、つまり 1通常の論理言語体系を「個別-一般」が整合的に表現することができる体系に拡張することが必要であること、 2通常の命題論理の体系を「命題レベルでの個別と一般」を表現できるように拡張することが必要であることである。 1に関してはこれまでで具体的な成果が一部出されたが、さらに深く探求されるべき興味深い点は多く残っている。2に関しては、本来次年度にその研究が詳細に展開されるべきものとして、本研究申請の際に記しておいたが、すでに幾つかの興味深い結果がでている。
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