大英図書館所蔵の法華経梵本(B写本)を解読し、ローマ字化を行った。この結果B写本は、法華経写本の中、貝葉本の一つの代表的系統をなすものであることが判明してきた。この写本に最も類似するものは、東京大学図書館所蔵梵本NO.413であることが明らかになった。又、ネパール王国、国立公文書館所蔵梵本NO.3-672にも類似している。B写本は、125-126葉に欠落部分(南条・ケル2本)319.6〜350.3は、これらの二本により補完することができた。 この研究の結果、1912年に出版された南条・ケル2本法華経原典のB写本の取扱いの不備を補正することもできたし又、語い、或いは文法的特徴を検討することにより、法華経梵本の代表的テキストを作る基礎ができた。 次の研究方針は、この写本とは別の系統と考えられる、東京大学図書館所蔵本(紙本)NO.414を中心としてテキストを解明したい。この写本にはネパール王国、国立公文書館所蔵本NO.5-144が属していると考えられる。又、パリのアジア協会所蔵本(紙本)もこれに類似する点がみられるので、研究の価値が認められる。
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