研究概要 |
(インドクジャク)伊豆シャボテン公園で本調査を行った。前年度から進めていた個体識別を成体雄(約35羽)についてほぼ完了させ、個体毎に(1)交尾成功度(交尾行動の有無および交尾前行動の頻度),(2)雄の性的形質の発達度(目玉模様の数とその対称性のゆらぎ),(3)寄生虫耐性(糞中の線虫卵数,原虫虫胞数)を測定し,相関分析を行った。その結果,目玉模様の対称性のゆらぎ(FA)が小さな個体が,交尾成功が高く,また寄生虫が少ないことが明らかになった。目玉模様のFAは目玉模様数とも相関していたが,先行研究の結果とは異なり,目玉模様数自体は交尾成功と相関せず,寄生虫耐性とも相関が見られなかった。雌は交尾に先立ち複数の雄のもとを訪れ,また雄による強制交尾が見られなかったので,雌はFAを手掛かりにしてより健康な配偶者を選んでいることが示唆された。今年度の調査からは,研究目的に対する一応の方向性が示されたが,観察個体数,観察時間など不十分な点もあるので,今後も調査を継続する予定である。これらの結果は,国際行動生態学会,日本動物行動学会で報告した。 (ヒト)ヒトの配偶者選択行動に関しては,文献研究に重点を置いた。ヘレナ・クローニン『性選択と利他行動』(工作舎),マット・リドレー『赤の女王』(翔泳社)の2冊を訳出し,海外における性選択と人間社会生物学に関する先端的研究の紹介に努めた。また,この分野の研究の動向を一般向けの記事にして,新聞・雑誌等を通じて発表した。
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