研究概要 |
EPRを指標に,聴覚と視覚,さらに触覚も加えて,注意系と知覚系の相互作用について検討した。 1.視覚系から聴覚注意系への作用。被験者の前方左右に設置したスピーカーから1100〓と700〓の高低純音を等確率・無作為な順序で呈示し,被験者には一方のスピーカーに視線を向けた状態で,特定の刺激を選択的に聴取させた。選択的注意に応ずるNdの結果は,視線方向が音源位置を手がかりとする選択的聴取のみならず,ピッチを手がかりとする聴取にも影響することを示唆した。 2.聴覚注意系から音声知覚系への作用。音声単語系列と朗読を同時に呈示し,単語刺激に対するEPRを記録した。単語に注意を払い,語彙判断課題遂行時にはN400が惹起され,同一単語の反復呈示でプライミングによるN400減衰が生じた。朗読注意時にはN400が出現せず,反復プライミング効果もみられなかった。本結果は注意系から音声知覚系への作用を示唆するが,その作用が単語認識前か後か,今後の検討課題を残す。 3.視覚における言語系の作用。被験者には未知の顔写真とランダムパターン図形を異なる実験系列で呈示し,各条件下で特定の刺激を標的として検出させた。顔条件と連想価の高いランダム図形を用いた条件では左半球優勢なN400が観察され,言語手がかりを視覚認知方略として使用することが示唆された。 4.触覚系から視覚注意系への作用。被験者に触刺激で得た視覚イメージ(例,りんご)をタキストスコープ上で形成させ,それに重畳するように視覚刺激を呈示した。視覚刺激とイメージが一致する条件では,不一致条件に比べ,後頭部N170振幅が増強した。視覚選択的注意に鋭敏に応ずるN170が主観的イメージ効果をもつ本結果は,モダリテイの異なる感覚入力を統合する上で注意系が重要な役割を果すことを示唆する。
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