本研究の目的は、幼児用の社会的スキル訓練ビデオ教材を開発し、これを使用した指導法について吟味することである。 まず最初に、遊びに加わる場面など幼児の対人接触場面についてビデオ録画し、各種かかわり行動の出現と、それに対する幼児の応答ならびにその結果について分析した。その結果、相手に話し掛けながら接近したり、黙って活動に参加してしまう方法が、相手と係われる成功率が約70%と高いことがわかった。それに対して、相手を見ているだけとか、相手の注目を期待してパフォーマンスする方法は、相手との係わり成功率が20%と低いことがわかった。また遊び友達の多い子どもは、成功率の高い係わり行動をとっていることも確かめられた。 次に、相手を見ているだけのような不適切なかかわりスキルと、話し掛けながら接近していく適切なかかわりスキルのモデルビデオを作成して、社会的スキルに問題のある幼児に視聴させて話し合いを行なった。その結果、適切な係わり行動の増加が認められ、効果がある程度確かめられた。しかし幼児期の子どもにビデオを使ったスキル訓練を適用するには、モデルの必要な行動への注目や言語による説明を理解させるための工夫をしなければならないこと、さらに実際に係わり行動を遂行するために、漸進的接近法や系統的脱感作法のような援助が必要であることも示唆された。これらの点については、これからの検討課題として残された。
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