研究課題/領域番号 |
05610116
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
教育・社会系心理学
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
神園 幸郎 琉球大学, 教育学部, 助教授 (70149334)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1993年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 自閉症 / サヴァン症候群 / 認知障害 / 社会性障害 |
研究概要 |
筆者は、サヴァン症候群児の特異才能の検証から自閉症児の認知障害の基礎に“動き"の抽象に関わる認知障害が存在し、そのことが自閉症の認知・言語障害や社会性の障害の基底をなしている可能性を想定した。本研究は、この仮説を検証し、自閉症の認知・言語障害の発生機序や社会性の障害を統一的に記述することを目的として、以下の検討を行った。 自閉症児がタキストコープ上で呈示された瞬間映像をどのように取り込み、処理し、保持するかをSperilingの実験パラダイムに基づいて検討した。その結果、自閉症児は統制群の健常児とほぼ等しい成績を示した。したがって、自閉症児において視覚情報貯蔵の能力が高いと結論することはできなかった。 次に、多様な運動をする物体を一定時間観察させた後、その物体の数種類の静止像とダミーの映像の中から観察した物体を強制選択させた。その結果、自閉症児間では一貫した正答の傾向は認められなかったが自閉症児の成績は、健常児に比べて有意に高かった。このことは、自閉症児は連続する運動体から瞬間の像を切り取る能力が高いものと解釈された。ただ、自閉症児間で正答のパタンが認められないことから、映像の切り取りは観察する主体の側の任意性が作用しているものと考えられる。 次に、運動物体の瞬間映像を一定の枚数呈示し、当該物体の動きの意味を推論させたところ、自閉症児は、健常児に比べて明らかに成績が悪かった。さらに、数種類の日常場面でのスクリプトを構成する行動系列のうち特定の行動を枚数の瞬間映像にして呈示し次に連なる行動を推論させると運動物体を刺激とする実験に比べて、健常児との成績の差は少ないものの、やはり有意に悪い成績であった。 これらの結果は自閉症の社会性障害や認知・言語障害について、その根元的な心的機制として“動き"の抽象の障害(“スチール写真"メタファー)を想定することの妥当性を示唆するものとしてみることができる。
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