研究概要 |
山形県酒田市および岡山県岡山市での調査結果を受けて、さらに平成7年度は、両地域を対象とした補充調査を実施した。以上の調査によって,以上の諸点が明らかになった。まず、前者については、村落関係では次の通りである。すなわち、酒田市に属する漆曽根集落では、25戸の農家のうち、6戸が水稲受託経営をおこなっていた。しかし、その規模は10ヘクタール未満にとどまっており、つまりは家族経営の枠を越えるものではないのである。なお、この集落を含む北平田地区(旧北平田村)では平成6年からライス・センターが稼働しており、それとのかかわりで秋作業の共同への可能性がでてきている。とくに平成8年以降は、「高速道路関連事業」の一環として、大巾な機械共同が進み、この秋作業の共同化の可能性は高まっていた。しかし、今後このような共同の生産組織にまで進むかどうかは未知数である。というのも、米価の低迷などにより、水稲作の不利性は、一層深化するだろうからである。 次に、岡山県岡山市の場合は、次の点が明らかになった。対象地とした岡山市藤田地区(旧藤田村)は、岡山市街地に近接しているところから、兼業への依存が高い。また、村落関係では、山形県酒田市の場合と同様に、大規模な生産組織は11戸の農家からなる一生産組織「雄山会」があるだけであり、その他は2〜5戸程度での地域共同、作業共同が任意におこなわれているものであった。ここにおいても、家族経営の枠内での共同が主流なのであり、その意味での生産組織なのである。こうして、両市の場合、ともに余剰労働力(機械化によって生み出された)を農家以外に合理的に配分し、そうして生産と生活を一体とした営みの単位である家の両生産をおこなっていた。しかしすでに述べた農業の不利性の一層の進行のなかで、その営農意識の行方があらためて問われなければならない。
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