共働き夫婦家族のおける父性機能の変容に関する実証的研究を進めるために、当該課題がもっとも明確に表われる看護婦の夫婦・家族関係を調査、分析した。調査対象は、長崎県内において入院病棟をもつ比較的大きな病院15か所、およびそれらの病院に勤務する既婚の看護婦約1500人である。調査の方法は、面接調査、郵送調査および配布調査によって実施した。 調査の規模が予定より大きくなったこと、そして、この課題の複雑さから、分析はまだ中間的なものにならざるを得ないが、いくつかの成果をまとめておこう。【.encircled1.】父性機能を変容させる客観的条件は生活時間の確保、確立であるが、同時に、夫婦関係のあり方と父性(夫・父親)のあり方、すなわち主体的条件の格差が大きいといえる。この主体的条件の格差は、夫・父親の生育歴・大学での学習内容・社会的・文化的環境などと夫婦間葛藤の解決の「あり方」に規定されている。【.encircled2.】父性機能の変容は、外的変容過程の内的変容過程という2つの側面から進んでいるが、これらはそれぞれ独立しており相互構造をもっていない。外的変容過程とは育児や子育てにおける父親の参加であり、内的変容過程とは家事労働への父親の参加のことであるが、父性機能の変容はまずもって育児や子育てへの参加拡大、外的変容過程を特徴としている。これにたいして、【.encircled3.】内的変容過程、家事労働への父親の参加は部分的かつ補完的であり、かつ家族間に大きな格差すなわち「総合的に関わっている夫・父親」と「ほとんど関わりをもたない夫・父親」が存在する。分析の重要な課題はこのメカニズムの解明であるが、夫・父親への面接調査(100人)を継続して実施し、父性機能変容の今日的特徴をさらに明らかにしていきたい。
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