現代都市の伝統的祭りに関わる人々の行動様式と組織形成の実態について比較社会学的調査を実施してみた。 まず、神戸の春の生田祭-神戸の都心における最大の神社祭礼-を支える人々の活動と組織構造を実証的に解明した。それによると、神戸の中心地域と重なる氏子区域を11の地区に分け、民主的な輪番制と委員会方式に基づいて祭祀を運営している。政教分離、氏子離れ、住民の流動化、都市文化の多様化などが進み、神社祭礼の実施は年々難しくなっているけれども、生田祭は岡方や宮元地区などの熱心な氏子たを核としながら、以前と変わらず盛大に行なわれている。 次に、生田祭と比較する形で横浜の日枝神社の秋季例大祭-横浜の都心では最大の神社祭礼-の組織構成を調べてみた。その結果を見ると、やはり生田祭以上に盛大に行なわれており、例えば30台余りの山車が横浜の繁華街伊勢佐木モールを巡行し、強烈な集合的オルギーが顕在化した。参加者は年令、性別、職業に関して余り偏寄りがなく、全ての住民が平等に参加できる祭りであると言えよう。仕掛けや組織形式を工夫すれば、大都市でも伝統的祭礼が十分に伝承されることが明らかになった。 なお、当初予定していた長崎の祭礼調査は、研究の都合上省略した。
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