1.初年度(平成5年度)は、戦後アジア留学を経験した日本人研究者の名簿を作成するため、東アジア、東南アジア、南アジア、アジア一般の地域別専門学会を調査し、関連主要学会(日本中国学会、東洋史研究会、朝鮮学会、東南アジア史学会、南アジア学会)を選定し、最新会員名簿からランダム・サンプリングできるよう準備を整えた。また日本人のアジア留学に関する意見調査を行なうための準備として、関連学会の主要会員にインタビューし、留学アンケート調査の項目作成の作業を行なった。 2.第2年次(平成6年度)は、日本人アジア研究者を対象に、彼らの留学がキャリア形成にどのような役割を果たしたか、またアジア留学に関して彼らがどのような問題を感じているかについて、アンケート方式による全国調査を実施した。(調査対象者547名、回答者266名(回収率48.6%) 調査内容は、日本人アジア研究者の、(1)留学動機、(2)留学先大学における教育・研究の実態、(3)留学先社会との交流、(4)帰国後の職業選択とその後の活動、(5)日本人のアジア留学に関する要望(自由意見)からなるものであり、貴重な回答(データ)を得ることができた。 調査を通じて明らかになったことは、日本人アジア研究者の養成過程において、アジア留学の機会が十分に保障されていないこと、また何らかの形で留学したとしても、その成果がキャリア形成に生かされていないことである。これは日本におけるアジア研究のインフラストラクチャーの整備が遅れていることと関係しており、大学および研究所等の早急な整備充実が望まれることが判明した。
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