イギリスの学校経営は、「1988年教育改革法」の制定以後、依然として激動の直中にある。ナショナル・カリキュラムの実施とそれに連動した共通テストの実施など、既に5年近くを経過したのに確かな改革の方法性が定まってきたとは断言できない状況が続いている。本研究では、そうした混沌状態の中、比較的定着し、実施に移されている「教員評価」の問題を取り上げ、人事行政や学校経営の側面、特に学校理事会の役割という視点から、今次の教育改革の動向を評価しようとした。具体的には、93年9月と94年2月及び3月の3回に渡る現地調査や資料収集などを通して、各学校段階での教員評価の実態とそれに対する教職員の意識を主として考察した。 現時点で得られた知見は、【.encircled1.】教員評価は、当初の政府の狙いよりも、教育界からの要望であった、職能成長に資するための資料として活用されようとしている。【.encircled2.】教員評価の過程でもっとも大切だと考えられているのが、評価者と被評価者とによる面接での課題の確認と方策確立のための相互協力であった。【.encircled3.】イギリスでの教員評価は、教育界に意味のある対話を形成する契機になりつつある、などの諸点であった。
|