研究概要 |
1 研究方法 ・まず小学校の国語・社会・音楽の教科書について,戦後から現在までの年度別発行・改訂状況を網羅する基礎資料を作成した。そうち戦後期にあたる昭和38年までを4期に区分し,各時期ごとに,発行部数や発行継続年数などの点から,その時期の代表と見なされる教科書を各教科数種類ずつ選定した。 ・これらの教科書の記載内容を精査して,児童の外国認識(及びそれと関連する自国認識)の形成に関与したと考えられる事項について対象地域・内容・年度などの要素を抽出し,それをパソコンで検索・整理した結果に基づいて,教科別に外国認識・自国認識に関する内容とその変遷について分析。考察を行った。この研究には坂本・駒込のほか,寺崎昌男(立教大)・吉村敏之(東京大)・奈須恵子(東京大)らが参加した。 得られた知見の概要 ・昭和20年代前期には,おくれた日本と進んだアメリカ・イギリス等との対比から国際協調と平和が協調されたが、アジア等に対する認識や視点は戦前の域を大きく越えてはいなかった。 ・20年代後期になると国際理解の観点が後退して,おくれたアジア・沈滞のヨーロッパに対して豊かなアメリカが憧れの対象とされ,国家目標も前期の文化国家から工業国家への志向転換が見られるようになる。 ・昭和30年代の前期には,高い技術力と貿易による豊かさへの追求が意図されるが,範を西ドイツやイギリスに求めたり,日本の長所や国際社会における日本人の在り方に言及するなどの傾向が見られるようになる。 ・後期になると貿易や豊かさの追求が弱まり,各国を客観的に認識する志向が強まる。アジア軽視の姿勢は消え,人種・差別問題等が登場する。また,文部省唱歌の復活などで日本への愛情の喚起も意図され始めた。 ・来年度は中学校の国語・社会・英語について同様の研究を行い,今年度の成果と併せてまとめる計画である。
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