研究課題/領域番号 |
05610286
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
日本史
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研究機関 | 宮城学院女子短期大学 |
研究代表者 |
大平 聡 宮城学院女子短期大学, 教養科, 助教授 (40192520)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1994年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1993年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 後写一切経 / 国家仏教 / 先写一切経 / 聖武天皇 / 写経所帳簿 / 正倉院文書 / 一切経 / 善光朱印経 / 五月一日経 / 藤原仲麻呂 / 手実 |
研究概要 |
奈良時代の国家支配を特徴づけていた国家仏教政策は、そのピークを国分寺建立・大仏造立の発願された天平期に求めることができる。本研究は、この時期に行われた「後写一切経」という国家的写経事業に着目し、その実態を解明することによって国家仏教政策について新な知見を加え、当該期の政治過程の復原を行うことを目的として行った。 研究は「正倉院文書」として遺存した写経所帳簿から「後写一切経」に関する帳簿を網羅的に収集し、その帳簿としての本来の姿を復原することから始めた。この作業は補助金文付以前から始めていたが、この作業をほぼ完了させることができた。なお、復原の完璧を期すために国立歴史民俗博物館架蔵のユロタイプ複製本による確認作業を行う必要があるが、これは今回はなし得ず、今後の課題として残さざるを得なかった。帳簿復原作業をほぼ完了したことによって二つの成果を得ることができた。一つは写経事業ごとに生み出される帳簿群の一類型を抽出としたことで、古代古文書学における帳簿論構築に一定の見通しを得ることができた。また今一つには帳簿の分析からその書写過程の具体像を明らかにすることができ、更にそこから進んで、ほぼ同時並行的に進められていた「先写一切経」との関係を追求して、「先写一切経」が聖武天皇自身のために、「後写一切経」が聖武天皇によって皇太子・阿倍内親王のために発願された一切経である見通しを得ることができた。そして、このことから奈良時代における一切経書写が国家仏教政策の一要素であり国家仏教推進主体としての天皇の仏教理解者としての姿を補強する機能を果たすものであったと推測した。また、「後写一切経」の内容をほぼ完全に復原し、これによって奈良時代の一切経の一つの姿を明らかにすることができた。そのほか、「善光朱印経」として知られる奈良朝写経の原本調査を行い、未紹介の2巻を新たに確認することができた。
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