近世後期の長崎貿易輸入商品の国内流通構造を明らかにするという研究課題を実施するにあたり、今年度は関連する資料の調査、収集に力を注ぎ、長崎県立図書館や長崎市立博物館、その外長崎県内各地の資料館などで本研究課題に関連する資料の調査とマイクロフイルムによる収集を行った。また大阪商工会議所図書室でも長崎貿易商の伊勢屋の資料のマイクロフイルムによる収集を行った。さらに関東地方各地の県立図書館においても貿易品の流通に関する関連資料の所在調査を行った。このように資料収集の面では予期した成果をあげることができたということができます。マイクロフイルムによって収集した資料は、焼き付けやフイルムリーダーによるコピーによって、それを直接利用することができる状況にありますが、資料の調査はまだ継続中であり、かつ資料が量的に厖大なものになったために、それらを用いた研究の成果が十分に論文という形で結実するような段階にはまだ至っていません。しかし近いうちに発表できるものと確信しています。そのなかで、1.唐船毎の売出と、砂糖、小間物、薬種、唐反物などの輸入品の長崎会所での落札の仕組み、落札価格の形成、長崎の宿町の役割について、2.落札商人から大阪唐薬種問屋を経て仲買にいたる商品の流れと、仕切書に表れる取引の様子、前貸金融の在り方、廻船での輸送と船主の仕切について、3、大阪における仲間組織の在り方と大阪銅座の役割、大阪の仲買から他地方への移送の様子について、などの点について新たな知見を得ることができました。
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