研究課題/領域番号 |
05610297
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
東洋史
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 浩明 東北大学, 法学部, 教授 (60114568)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1993年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 中国 / 清代 / 土地所有 / 法 / 紛争 / 裁判 / 調停 |
研究概要 |
本研究では、清代地方長官の判決文集「判語」、および地方官庁文書の代表としての『淡新档案』(台湾省淡水庁・新竹県)の蒐集と分析を通じて、中国清代における土地紛争と紛争解決の特色を検討した。研究の結果、次の二点が明らかになった。 第一に、そこでは、権利関係の再確定(我々の所謂「民事」裁判)と、悪事の懲戒・犯罪行為に対する処罰(「刑事」裁判)とは一つの手続きの中で一括して処理されており、事案はむしろ可罰性の低い(その限りで民事的側面の比重の大きい)「細事」と、可罰性の高い「重案」といった形で分類されていた。その背後には、所与の権利の実現と暴力的な自己利益の貫徹とが区別しがたく融合する形で行われていたという現実がある。その意味で、権利秩序の全体は「小競合い」とその日常的な調整の中で保たれており、その調整が適切であれば小競合いは収束に向かい、不適切であると火の手は拡大し、やがては重案が起こるといった関係にあった。 第二に、官憲の行なう裁きのうち、上の細事に対応する「戸婚田土・州県自理裁判」と、重案を取り扱う「命盗重案・必要的覆審制裁判」とは、主に依拠される法源に着目して一方は「情理」に基づく調停、他方は成文法規に厳密に準拠した裁判という形で対極的な性格付けをされることが多かった。しかし検討を通じて明らかになる通り、後者も皇帝その人に着目すれば情理に基づく裁きと言う他なく、むしろ両者は、地方官がその任された管轄地域内に対して、また委ねられた笞杖までの刑罰範囲を用いて行う自由裁量的な裁きと、皇帝が全天下に対して、また死刑にまで到る全刑罰範囲を用いて行う自由裁量的な裁きという形で同心円的に捉えることが適切である。
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