ローマ帝国の成立と構造を属州から観察することを主眼にし、特に小アジアのリキアに焦点を絞って研究を進めた。ローマ帝国の前史としてペルシア帝国・ヘレニズム王国の統活形態をペルシア戦争(前五世紀はじめ)の時代から検討し、ペルシア帝国と現地の諸共同体との関係、ヘルニズム世〓〓〓の各王国の支配機構の研究を行った。 以上の研究のあとをうけていよいよローマ支配下の属州の実態にメスを入れ、同時代のギリシア語碑文(「オリエント・ギリシア碑文集成」〓GIS所収)の解釈の作業に入った。史料の内容は各都市〓〓のローマへの貢献者を顕彰したもので、都市の有力者層の具体的なあり方が判明した。 リキアについての史料調査のほかに、筆者は過去三年に亘って地中海東岸で諸都市の実地調査を実施し、それぞれの地域での古代都市の実態を遺跡を通じて窺い知ることができた。上記の史料研究と伴せてローマ帝国像の総合的な描写に資したいと思っている。 以上の成果はその一部が『大阪大学文学部紀要』(1994年刊)に発表される予定である。
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