研究概要 |
日本における古代メソポタミアの法典についての本格的研究は、原田慶吉氏の『楔形文字法の研究』(1949年)を嚆矢とするが、その後、新進の大江節子氏によるシュメール裁判文書の研究を除き、見るべき研究がほとんどないのが実情である。ところが、原田氏の『楔形文字法の研究』の出版と前後して、リピト・イシュタル法典(断片)(1947年に発見)、エシュヌンナ法典(一部)(1948年に発見)、ついでウルナンム法典(断片)(1952年に発見)と、ハンムラピ法典より古い法典が、相次いで発見・公刊されており、これらの新しく発見された楔形文字法の邦訳と研究が求められている。特に最近海外で、これらの法典に対する新たな関心が高まり、個別研究が相次いで発表されているほか、法典そのものの性格をめぐってもかなり活発な議論が行われている。 本研究の主要目的は、海外でのこれらの研究や議論を踏まえ、原田慶吉以来の我が国の楔形文字法の研究をアップトゥデイトなものにする点にあった。科学研究費を受けて行った2年間の研究で、当初に予定した研究がすべて完了したとは言い難く、一部は今後の課題として残さざるを得なかったが、海外での諸研究や英・独・仏訳などを参照しつつハンムラピ法典碑の全訳を終えることが出来、「科学研究費補助金の研究成果報告書」として提出する。 ハンムラピ法典の邦訳に当たって、異本の読みをすべて網羅しているRykle Borger,Babylonisch-Assyrische Lesestucke,2.,Analecta Orientalia54(neubearbeitete Auflage),Heft l(Rome:Pontificium lnstitutum Biblicum,1979)に収録されているテキストを原本とした。
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