研究概要 |
13〜15世紀のイングランドにおいて、ジェントリとして分類され得る家系を同定することから研究を始めた。13世紀のケムブリッジシアに関する筆者(朝治)のこれまでの研究、すなわちバロンと呼ばれた人々、中山領主層及び自由保有者層に属す人々の間の封主・封臣関係や、官職経験等に関する研究を踏まえて、今回は特に自由保有者層に関する分析を行った。 まず13世紀にこれらの人々が官職にありついたり、大貴族の所領役人として働いたりすることにより、行政能力を身につけていく過程において多くみられるのは陪審員としての経歴であることに目をつけ、1261年と1268年の巡回裁判記録を分析した。従来の研究では陪審員になったのは騎士層の人々であると考えられていたが、実際には自由保有者層の人々であったこと及び彼等の利害も1258〜65年のバロンの国政改革運動中に出された改革計画に反映していることを確認した。その成果は、1993年9月19日、同志社大学でおこなわれた法制史学会近畿部会で、「13世紀イングランド・バロン反乱期の司法改革」として発表の機会を得た。次いで陪審員としての経験のもの意義がその後、14,15世紀にどのような意義をもつようになるかを概観するための準備作業として、中世後期イングランド司法制度史とその史料について調査し、1993年12月9日、大阪市立大学文学部詞音研究室でのセミナーの席で「中世イングランドにおける法史料の伝来と内容」として報告した。
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