1.本課題では研究計画に従い、以下の通り、研究を実施した。 (1)京都及び奈良の寺院、図書館に7回の調査旅行を行った。 (2)閲覧・調査を行った資料のうち、重要と認められるものについて写真を撮影し、約1500コマの現像・焼付を行った。 (3)上記の収集によって入手した資料をもとに平安時代後半期の訓点資料の性格について考察を行った。その結果は次項の通りである。 2.(1)平安時代の後半期に記入された訓点は、その全てが前代のものを踏襲したものではなく、少なくとも部分的な改変を経たものであることを確認した。 (2)また、この時期に新たに記入された訓点も少なからず存在することを確認した。ただし、それらはしばしば漢文訓読語としての類型に合った表現、語法を用いているため、当代的な言語の要素を判別・確認するにはさらに方法論を検討すべきであるとの見解に達した。 (3)従来知られている重要な資料であっても、その中には誤りと認められる語彙・語法を含むものが多く見られ、国語資料として使用する際には十分な注意を払う必要があることを確認した。 (4)今後は平安時代後半期の訓点資料にどのような当代的要素(口語的な表現等)が混入しているかを判別する方法論等をさらに検討していく予定である。なお、本課題の成果を発表するために数編の論文の投稿を準備中である。
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