まず、平安時代から室町時代にわたる日記資料(設備費として購入した図書、国文学研究資料館等で閲覧したもの及び複写したもの)の中から、言談記事を抜き出し、言談の年月日、その時刻と天候、話者と聞き手、その内容にわけて、その一つ一つをコンピュータに入力する作業を行った(作業協力者の協力による作業)。言談記事の分量が多いため、その分析を完了するには至っておらず、現在もなお作業を進めているが、平安時代の貴族日記を中心にかなりの作業を行うことができた。 次に、その作業と並行しながら、抜き出した言談記事の分析を進めた。これについても現在なお分析作業を継続中であり、抜き出している一つ一つの項目の特徴を明らかにするには至っていないが、例えば藤原忠実の日記『殿暦』の言談記事には物忌みについての内容が多いことなど、部分的にその特徴を明らかにし得るものもある。 また言談と説話との関わりの点では、特に『冨家語』と貴族日記との関わりを中心に研究を進めた。『冨家語』の言談内容と関わる貴族日記としては、『兵範記』と『山槐記』とがあり、その日記の記事から、『冨家語』の言談の背景や意味をある程度まで明らかにすることができた。更に日記の記事の収集分析から『冨家語』の言談の聞き手である高階仲行の言談時の立場を明らかにし、『冨家語』の言談の持つ意味の考察を進めることができた。このことについては、『中世文学研究-資料と論攷-』(1994年秋、和泉書院より共著として刊行予定)所収の論文として、既に投稿済みであり発表の予定である。
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